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出版社/著者からの内容紹介
「前代未聞の快挙」「ネクタイをしないまま出社した」「彼は口が固い」……この間違い、わかりますか? 日常の言いまわし、漢字・熟語の読み方、慣用句・ことわざの使い方などなど、指摘される前に、本書で要チェック!
抄録(「電子書店パピレス」より)
電車が混まない前に帰宅する●“混まない前”ってよく考えるとヘン!
ふだんは何となく聞き流してしまうのに、よくよく考えてみると奇妙な言い方というのがある。たとえば、
「電車が混まない前に帰宅する」
という言い方である。
いわんとしていることはよくわかるが、考えてみると「混まない前」というところがヘンだ。
「混まない前」とは、「混まない」=「空《す》いている前」ということになり、これでは「混んでいる」ことになりかねない。つまり、この場合は、
「電車が混む前に帰宅する」
というのが正しい言い方なのである。
では、なぜ、「混まない前」などという言い方をしばしば耳にするのか? 理由は二つ考えられるだろう。
一つは、「混まないうちに」の「うちに」がいつの間にか「前に」に変わってしまったということ。
もう一つは、「電車が混まないほうがいい」と思っている人が、「その前に帰宅したい」と考えると、つい「電車が混まない前に」といってしまうということである。
そういえば、「○○しない前」という言い方には、
「雨が降らない前に」
「地震がこない前に」
「失敗しない前に」
など、「あってほしくない」ことを事前に回避《かいひ》しようとするときに、うっかり使ってしまうことが多い。
人間の心理や感情は、言葉づかいにも微妙に影響をあたえるようである。
ネクタイをしないまま出社した●何もしていない状態に「〜なまま」は不自然
「ネクタイをしたまま眠ってしまった」
といえば、ネクタイを「した状態」で眠ってしまった、ということだ。
では、
「ネクタイをしないまま出社した」
はどうかといえば、ネクタイを「しない状態」で出社した、ということになる。
別に間違いではないように思う人もいるだろうが、厳密にいうと、後者の言い方は少しヘンだ。
というのも、この場合の「まま」は、「あることを終えたそのときの状態」という意味だから。つまり、「ネクタイをしたまま」という言い方なら、その「あること」は「ネクタイを結ぶ」という行為を指すことになるが、「ネクタイをしないまま」は、最初からネクタイをしていないのだから、「あること」がない。何もしていないのに、「○○なまま」という言い方をするのは不自然なのである。
こんなときは、
「ネクタイをしないで出社した」
「ネクタイをせずに出社した」
とふつうにいったほうがいい。
もしも「まま」を使って表現したい場合は、前の部分を「○○しない」ではなく「○○した」にする。右の例でいうなら、
「普段着のまま出社した」
とすればいい。
著者について
日本語倶楽部(にほんごくらぶ)
日本語に関して、語源、字源、漢字、流行語などさまざまな興味深いテーマを、日夜研究・発表しているグループ。学界にはできないユニークな研究を、特定の学説にはとらわれない柔軟な発想でおこなうことを目標とするウイットあふれる集団。著書には『そんな言葉づかいでは恥をかく〈1〉〈2〉』『そんな漢字力では恥をかく』『そんなeメールでは恥をかく』〈知れば知るほど面白い〉シリーズの『語源』『漢字の謎』(小社刊)などがある。