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出版社/著者からの内容紹介
米国をはじめ世界各国で人気が高まっているオーガニック食品は、農薬、化学肥料などの使用において厳しい生産基準を満たした食品のことを指す。その種類は野菜、果実をはじめ、畜産物、パスタ、スナック菓子、乳製品、ジュースなど多岐に渡る。「オーガニック食品生産法」を施行し、世界のオーガニック食品をリードしようとしている米国と、日本の有機食品との違いを浮き彫りにしながら、オーガニック食品の全貌を解説。
抄録(「電子書店パピレス」より)
消費者は「食の安全性」を求めだした
米国では何故、オーガニック食品がこのようなブームとなっているのか。その理由を八〇年代以降、米国のライフスタイルを貫く健康志向に求めるのはたやすい。しかし、米国の人々がオーガニック食品を求める理由はより切実な問題に起因しているようである。
消費者の間にオーガニック食品の認知度が一段と高まったのは、従来の食品が及ぼす人体への害が相次いで発表されるなど、既存の食品の生産方法に対する疑問が投げかけられたからである。
その一つが米国のナチュラル問題研究機関のカーティス博士による「子供は体重一キログラムに対する食物消費量が大人より多いため、毒物に抵抗する力が弱く、農薬による被害を受けやすい」という学説である。米国ではここ一〇年ほどの間に高学歴で高収入の母親が増えた結果、子供の食事に気を配る傾向が年々強まっているという。収入的にも豊かな母親達がこうしてオーガニック食品を買い求めるようになったことが、オーガニック食品普及に大きく寄与した。
また、八九年春に社会問題として大きく浮上したのは、リンゴの落下防止剤の問題である。米国の環境保護団体であるNRDC(自然資源擁護協会)が「落下防止剤として使われる農薬、アラーには発ガン性があり、特に大人よりも体重が少ない子供にとってはガンを誘発する危険性が高い」というデータを発表した。
これに関連して、ハリウッドの大物女優であるメリル・ストリープ女史が子供を持つ母親として、農薬を使用したリンゴを社会で許すべきではないとマスコミ等で盛んに主張したため、米国の消費者は一気に食品の安全性に目を向け始めたのである。
これをきっかけに、農薬を使用するリンゴ農家への風当りも強まったことから、農家の中には、農薬を使用しないオーガニック農法へと転換する動きも出始めた。また、九三年には、FDA(米食品医薬品局)がたった二二の果物・野菜から一〇八もの農薬が検出された、という調査結果をまとめたのを受け、ある環境保護団体は、「八種類の農薬を接種しただけでも、子供はガンにかかりやすくなる」との調査を発表した。
こうした数々のデータが報告され、環境保護団体の活動が活発となるにつれて、消費者はますます安全な食品を求め出すという構図になっている。九三年に業界誌『ローデル・プレス』が行った調査では、驚くことに八七%もの消費者が「可能ならばオーガニック食品を食べたい」とするデータも挙がるほど、消費者は農薬を拒否し、身体に安全で、地球環境にも良いとされるオーガニック食品を求める動きを強めているのである。
環境破壊への危機感がオーガニック農法を促進
一方、オーガニック農法に切り替える農家が増え続けているのはどのような理由からだろうか。もちろん、消費者の間にオーガニック食品人気が高まれば、商業的な見地からオーガニック農産物の生産に着手する農家が増えるのは当然である。しかし、理由はそれだけではない。従来の農法が及ぼす環境破壊、特に土壌の農薬汚染に対する危機感が農家をオーガニック農法に駆り立てているのである。
従来の農法が環境にいかに悪影響を与えているかを示すデータがある。WHO(世界保健機関)の統計によると、除草剤や殺虫剤、殺菌剤などの化学合成薬物の取引高は、八九年度で二一五億ドルに上る。これだけの金額に相当する農薬、化学肥料が地球上にばら蒔かれているわけである。
米国では八〇年代後半から化学肥料や農薬の使用を抑えようとする動きがあるが、それでも現在二万種以上の農薬類が投入され、そのうち七五%が化学合成物でその重量は二二億ポンド(約一〇億kg)に上るといわれている。また、前述のニュー・ホープ・コミュニケーションによれば、米国の場合、約九〇万の農家で、年間約八二億ドル分の農薬を散布しているというデータもある。ちなみに日本は農薬使用量こそ米国より少ないものの単位面積当たりの散布量は米国の約九倍とされ、その密度ははるかに濃いのである。
こうした農薬の散布によって、目的とする病害虫だけでなく、その他の益虫も含め、多くの生命体の死滅を招いていることはるオーガニック食品を求める動きを強めているのである。否めない。土壌及び食糧への農薬残留もまた大きな社会問題になっている。
このまま農薬を使用し続け、生態系を破壊する行為にストップをかけて、元来の生態系をとり戻さなければ、農業そのものが滅びてしまう。こうした認識が農家に広がるにつれ、オーガニック農業は盛んになっているのである。オーガニック農法ならば化学薬物は使用しないため、生態系や土壌をこれ以上痛めないことは明白だからである。
著者について
山口 智洋(やまぐち ともひろ)
1956年福岡県生まれ。西南学院大学文学部国際文化学科卒業。同校在学中、同校派遣留学生としてニューヨーク州立大学で学ぶ。貿易会社のシアトル支店などの勤務を経て、1993年、食品輸入を手掛けるアースアンドライフ(株)に入社、米国のコールマン・ナチュラル・ミート社からオーガニック牛肉などの輸入を手掛ける。現在、同社が主宰するオーガニック食品の普及を目指した団体、オーガニックバンクの海外事業部長。