|
|
出版社/著者からの内容紹介
悪徳金融の実態、商工ローンの本質……長年、金融問題を追ってきた執筆者たちがまとめた本書。暴力金融まがいなマチ金出身の映画監督・香月秀之のインタビューも収録し、「金融問題」の本質に迫った! 真にカネに苦しんでいる人々に贈る“生きた参考書”。
抄録(「電子書店パピレス」より)
Cさんは、現役の日栄社員だ。現在も西日本のある支店に勤務。顧客管理を担当しているという。三年で大半の社員が辞めていくという日栄では、Cさんは五年近く在籍しているベテラン社員だ。
日栄では年に数回、キャンペーンを実施して、すでに顧客となっている会社に営業をかけてまた新たに貸し込んでは、融資残高を増やす。いかに、顧客に再度、貸すことかできるのかが顧客管理の腕の見せ所だ。
「だいたい七〇パーセントくらいは、何も言わなくても、キャンペーンというだけで借りてくれますよ。残りの二〇パーセントは電話で頼めばいけますね。問題があと一〇パーセント。なかなか言うことを聞いてくれないんです」
と言うCさんは、松田社長から電話で詰められたことがあるという。
「松田社長は、キャンペーンで千軒の顧客があって九百九十九軒まで追い貸しできて一軒だけがダメであっても、えらい怒ります、絶対に褒めてくれません。『なにやっとるんや。相手の家押しかけてでも、なんとかしろ』と私は言われました」
通常、顧客管理は一人で三百軒程度の顧客を担当している。問題の一〇パーセント、三十軒ほどとどう渡り合うかが勝負なのだという。まず、多いのが借りない、また逆に返済を考えているという顧客だ。そんな時は決まってこう対応する。
「すぐに一括で今までの分、返済してもらいましょうか。今すぐです」
こう言うのだという。
「有無を言わせない感じで言います。とにかく強く出る。一部の返済をと頼んでくる顧客もいますが、まったく受け付けない。とにかく、返せ返せと迫る。返済すると枠が減ってもう借りれなくなるというトークもよく使います」
そうすることで、一〇パーセントのうち五パーセント以上は元通り顧客として継続してくれる。残りの顧客は、それでも返済を希望したり、金を借りないというそうだ。
Cさんは中国地方のある会社が、どうしても金利が高いのでもう借りないと、企業の社長としては当然の主張を繰り返す社長を説得に出かけたという。
「会社に行っても門前払いですわ。ずっと何時間も待っていると、銀行員と思われる人が集金にきた。見ると、都市銀行のバッジをつけているじゃないですか。私はすぐに社長に電話しました。『今、社長さんのところにきていた◯◯銀行の人とコーヒー飲んでます。日栄の名刺を渡して、社長さんの会社に世話になっていると話してるんですわ』。どこの会社でも、日栄と取引していることは、会社の信用問題と取引の関係で銀行には知られたくない。社長は『わかった、わかったから、借りるから、黙っててくれ』。これで、仕事は終わりました」
その社長は、黙って三百万円の追加融資を引き受けたのであった。
これで追い貸しが成立するのだが、そこで今、問題になっているのが根保証だ。例えば、最初に融資を受けるときに、通常なら借りた分、例えば債務者が借りたのを五百万円とすると、保証人には千五百万円の保証枠でサインさせるのだ。
これは、後の追い貸しを見越してあらかじめ多めに保証枠を確保しておくものだ。保証人には債務者に融資して契約するときに説明する。だが、日栄の元役員は、九州であったある裁判の法廷でこう認めている。
「本当のことを細かく説明したら、誰も保証人になってくれませんよ」
だが、多くの保証人は「なぜか?」と聞いてくる。当然のことだ。
「不動産の根保証は一二〇パーセント取っているからとか、手形期日が来ると交換があって、交換前に融資を振り込むのでだぶってしまい……などと言いくるめます。だいたいの保証人なら訳がわからなくなり、何かわからんがまあサインしようかとなる。それでも、折れないなら、債務者に話をさせる。私が担当している会社でも、債務者が百万円ほど保証人に現金を渡して『まあええやんか、これで』と収拾することが何度もありました」
そんな時に発揮するのが、ごまかしのトークである。日栄ではこれができないと、メシが食えないという。
「言い訳したり、専門用語を駆使したり、何でもいいから根保証から話題をそらしてサインさせる。日栄にいると言い訳や意味不明な理屈がうまくなります」
とCさんは苦笑する。
著者について
【執筆者紹介】
横山 大輔(よこやま だいすけ)
1973年生まれ。金融ルポライター。小さい頃から法律と裁判に興味をもち、現在働きながらも弁護士に転向しようかと思案中。今後も悪徳金融に対する調査・追及を続ける。
安藤 史典(あんどう ふみのり)
1965年生まれ。新聞社などを経て、現在はフリーの編集・著述業。経済、文化、医療など、様々な分野についての執筆を行っている。また、フォト・ルポルタージュも手がけている。
宮田 祐一(みやた ゆういち)
1966年生まれ。フリーライター。大阪を拠点に、週刊誌や月刊誌の取材、執筆を手がける。著書多数。
北田 明子(きただ あきこ)
大阪府出身。新聞社勤務を経て、1988年イギリスに留学。帰国後、フリーランスのジャーナリストとして経済問題や社会問題の記事を新聞、雑誌などに執筆。一方で編集・企画事務所を設立し、プランナーとしても活動している。著書に『笑うヤミ金融』(ダイヤモンド社)など。